本日は、『相続財産の範囲と評価⑧』についてを、お話させて頂きます。

1、管理費用

①管理費用について

遺産の管理費用については、民法885条1項本文において『相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する』としているので、相続財産によって清算されるものです。

しかし、この清算は、遺産分割手続内で行うのか、分割手続とは別の民事訴訟で行うのかが問題となります。

これにつきましては、『相続債務は各相続人がその相続分に応じて負担すべきものであり、仮に相続人の1人が他の相続人のために相続債務又は相続財産の管理費用を立替払いをしたとしても、その償還請求権は遺産分割とは別途に行使すべきである。』として、消極に解する裁判例もありました。

しかし、『相続財産の管理に必要な費用は相続財産から支弁すべきものであるから、分割すべき相続財産およびその収益の額を算定するに当たっては、当然右のような管理費用を控除すべきである』として、遺産分割手続内での清算を積極に解する見解が実務の主流となります。

ただし、何らかの事情により管理費用のみが残されたときは、他の共同相続人に対し、民事訴訟手続によりその相続分に応じて請求する以外はありません

遺産の管理費用には、保存に必要な費用すなわち必要費が含まれることに争いはありませんが、利用・改良に必要な費用すなわち有益費、公租公課、相続債務の弁済費用等が含まれるかについては争いがあります。

②有益費

ⅰ.積極例  

相続人が建物につき保存のために支出した必要経費及び有益費については、同人が相続開始後から現在まで建物を使用したその賃借料と差し引きと認めるのが相当であるとの審判例があります。

ⅱ.消極例

遺産分割のための相続財産の評価は、分割時を基準とすべく、そのときまでに加えられた遺産に対する改良費は、分割によりその物を取得する相続人に対し、遺産分割手続外にて償還請求し得るから、分割裁判において考慮する必要はないとの裁判例があります。

③公租公課

ⅰ.積極例  

遺産たる土地建物の一部を管理するにつき支出した固定資産税は、相続財産に関する費用として、相続財産から支弁すべきものであるとの裁判例があります。

ⅱ.消極例  

遺産に関する固定資産税については、相続人間で遺産分割審判とは別個に清算すべきであるとの裁判例があります。

④相続税

ⅰ.積極例  

相続人の一人が立替払いした相続税につき、相続人全員が、遺産分割における清算を希望しているときに、遺産分割手続内での清算を求めた審判例があります。

ⅱ.消極例

相続税は、各共同相続人が遺産分割によって取得した具体的相続分に応じて、各相続人が負担すべきもので、遺産分割手続において清算すべきものではないとする審判例があります。

⑤相続債務の弁済費用

ⅰ.消極例  
相続人の一部の者が、遺産分割前に被相続人の債務を弁済したような場合には、その債務並びに弁済がいずれも正当と認められる限り、相続財産に関する費用と同様、遺産分割手続中で清算するのが相当であるとの裁判例があります。

ⅱ.積極例  

他の共同相続人のために相続債務の立替弁済をしたとしても、その償還は通常の民事訴訟手続きによるべきで、遺産分割の審判事件において求めることはできないとの裁判例があります。


以上、『相続財産の範囲と評価⑧』について、お話させていただきました。



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Posted by 荒木財産FP at 07:20│Comments(0)相続ミニ知識
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