本日は、『特別受益⑤』について、ご紹介させていただきます。

1.特別受益の評価

①特別受益の評価の基準時

具体的相続分を算定する際に控除する特別受益額の評価時点は、通説及び多数の審判例で相続開始時としています。

つまり、過去になされた贈与であっても、その対象物の相続開始時の評価額にひき直して特別受益額とされるわけです。

これに対して、現実に遺産を分配する当たっての遺産自体の評価につきましては遺産分割時説が通説です。

このため、実務では、特別受益及び寄与分につきましては相続開始時を基準として算定して具体的相続分を定め、これを前提として遺産分割時を基準として現実の分割を行うというのが多くの取り扱いとなっています。

②贈与の目的物の滅失又は価額の増減

受贈者の行為によって贈与の目的物が滅失したり価額の増減があった場合につきましては、相続人間の公平を維持するため、その目的物が相続開始当時、贈与当時の状態のままで存するものとみなしたうえで、そのような状態の目的物を相続開始時の時価で評価するものとされています。

この場合の受贈者の行為には、行為のみならず過失も含むものと解されています。

したがいまして、例えば贈与当時500万円の不動産を贈られその後これを1000万円で売却した場合も、その不動産が贈与当時の状態のままであるものと仮定して相続開始時の価格で5000万円と評価されるようであれば、当該贈与は5000万円の特別受益額となります。

なお、前記規定の反対解釈として、受贈者の行為によらずに贈与の目的物が滅失したり価額の増減が生じた場合につきましては、滅失のときには特別受益はないものと考え、価額の増減のときには、その増減した相続開始時の価額を基準として特別受益が算定されることになります。

③評価が問題となる受贈財産

ⅰ.金銭
金銭の贈与を受けた場合につきましては、かつては金銭の価額の変動ということはないので受贈当時の金額で算定すべきであるとする見解多かったようです。

しかし、その後、インフレ、物価上昇を考慮し、その実質的価値を相続開始時の貨幣価値に換算評価すべきあるとする見解が有力が有力になっていたところ、最高裁も後者の考えを採用するに至りました。

最高裁昭和51年3月18日判決は、遺留分算定の基礎となる財産の価額についてではありますが、相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として加算する場合には、贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもって評価すべきであるとしました。

これは遺留分の算定の場合に関する判例ですが、具体的相続分を算定する場合につきましても別異に解すべき理由は無く、その後、実務はこれに沿って運用されていると思われます。

ⅱ.農地

農地の評価につきましては、宅地転用の見込みの有無、強弱によって評価に開きがでるため問題となることが多いようです。

最高裁家庭局は、『農地が宅地として確定している場合、あるいはそのような蓋然性が高い場合には、その事情を考慮して算定すべきであるとされています。』


以上、『特別受益⑤』について、ご紹介させていただきました。



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Posted by 荒木財産FP at 07:12│Comments(0)相続ミニ知識
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