本日は、『遺言で撤回を明示しなくても、撤回したとみなされる場合』について、お話させていただきます。

1 遺言で撤回を明示しなくても、撤回したとみなされる場合

遺言の撤回は、遺言の方式(前回のお話の内容)によることとされていますが、民法は次の四つの場合には、撤回の遺言がなくても遺言の撤回があったものとして扱うこととされています。

①後の遺言で前の遺言内容に抵触する遺言をしたとき(民法1023条1項)

②遺言をした後にその遺言内容に抵触する法律行為をしたとき(民法1023条2項)

③遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条前段)

④遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条後段)

民法がこのような規定を定めたのには、こうした事実があれば遺言者には撤回の意思があると認められることから、このように扱うことこそが遺言者の最終意思にかなうと考えられることによるからです。

4つの要件の詳細については、次の通りとなります。、

①前の遺言内容に抵触する遺言

前の遺言ではある土地を甲に遺言するとしていたのに、後の遺言ではその同じ土地を乙に遺贈すると遺言するように、前の遺言を執行させなければ実現できないような内容の遺言をした場合には、その内容の抵触する部分について、前の遺言のその部分の撤回があったとして扱われることとなります。

後の遺言は有効なものであれば、その方式の種類は問われません。

二つの遺言のずれが前か後かは、その日付の前後により判断されることとなります。

自筆証書遺言で正確な年月日の記載が要求されるのは、このためとなります。


②遺言内容に抵触する法律行為

前の遺言で甲に遺贈するとしていた土地を、遺言者が後に売却してしまったというような場合がその典型例となります。

なお、この遺言に抵触する法律行為とは上記の典型例のような、後の遺言者の法律行為により遺言内容の実現が不可能となるだけでなく、後の遺言者の行為が前の遺言と両立させない趣旨でされたことがいろいろの事情からみてあきらかな場合をも含むものとされています。

たとえば、1500万円の遺贈する旨の遺言をした後で、遺言者がこの遺贈にかえて1000万円を受贈者に生前贈与し、受遺者もそれ以外に請求しないと約束した場合などは遺言の撤回があったものと認められるとした判例があります。(大審院昭和18年3月19日)

また、終生扶養を受けることを前提として養子縁組をし、大半の不動産を遺贈する旨の遺言をしたけれども、後にその養子と不仲になり協議離婚をしたというケースでも、遺言の撤回があったと認められているケースがあります。

なお、撤回があったとみなされるのは、①と同様に、その抵触する部分だけとなります。

③遺言者の放棄

遺言者自身が遺言書であることを知りながらわざと遺言書を破棄する場合は、その破棄された部分につき撤回があったものとみなされます。

この場合の『破棄』とは、破り捨て、焼き捨て、一部切断などのほか、遺言者のもとの文字が判読できない程度にぬりつぶすような行為も含まれることとなります。

もとの文字が判読できるような末梢ですと、『破棄』でなく、『変更ないし訂正』ということになり、一定の形式を備えないと元の文字の方が効力を持つこととなります。

公正証書遺言の場合は、その原本が公証役場に保存されてますので、遺言者が手元にある生本を破棄しても遺言の撤回と認められない可能性はあります。

正本の破棄とあわせて、新たな遺言書を遺された方がよろしいでしょう。

④遺贈の目的物の破棄

遺言者自身が遺贈の目的物を破棄したとき(例:遺贈の目的たる建物を取り壊した時)は、その破棄した部分につき遺贈が撤回されたものとみなされます。

以上、『遺言で撤回を明示しなくても、撤回したとみなされる場合』について、お話させていただきました。



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Posted by 荒木財産FP at 07:46│Comments(0)相続ミニ知識
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